退去時の費用負担を減らすコツ
借主の故意・過失によるものは借主に原状回復義務が発生します。その際、退去時に費用がかかり敷金の戻りが少なくなったり、敷金では足りずに請求されることになります。
そこで、退去時に契約上借主が費用負担しなければいけないこと以外にかかる費用をなくすコツをご紹介いたします。
※契約上、借主は退去時に、ルームクリーニング、エアコンクリーニング、畳の表替え、襖の張替え、障子の張替えなどの費用負担がある場合があります。
今回ご紹介するコツはこれらを除いたものです。
1.普段から出来ること(掃除と換気)
まず一番大事なことは、普段からの心掛けです。
借主には、善管注意義務という義務があります。お部屋はあくまでも大家さんのものであるから、自分のものより大事に扱う必要があります。
つまり、普段からお部屋を大事に使うという心掛けが必要となります。心掛け一つで退去時に余計な費用がかからなくなります。
では、普段からの心掛けとは何でしょうか。
- 掃除をこまめに行う
- 空気循環をよくする(部屋の通気口を開け、浴室の換気扇は基本的には回したままにする)
最も大事なことはこの2つです。
こうした普段からの清掃や手入れを行うこと、空気循環をよくすることによって、
- クロス、床の汚れや染み
- 物を置いた跡(変色)
- カビ
- 鏡の白化現象
- 結露による周辺の劣化
などが防げます。
これらは、退去の立会時に多く見られる事例です。これらの事例を防ぐ方法を、もう少し細かくご紹介いたします。
1-1 クロスや床(特にCF,タイルカーペット、フロアタイル)の汚れや染みについて
壁や床の汚れや染みは埃等が染みついて落ちなくなったものが一番多いです。
家具、棚やベッド等、壁沿いに置いた家具の跡が壁に着くことがあります。
また、キッチンのクロスの油汚れ、玄関のクロスの汚れも多いです。
普段から掃除をしていればこのようなこと防げます。
床の変色は、家具、棚やベッド等から塗料などが化学変化を起こして染みついたものがほとんどです。たまに持ち上げてみて染みができていないか確認することをお勧めします。
ベッドや棚、冷蔵庫等、物を置いたときにできる床(CF)の凹みは過失ではありません。
また、マットや絨毯等を敷きっぱなしにするとマットや絨毯等の跡がついてしまうことがあります。掃除をするときには必ず剥がしてマットや絨毯等の下も掃除をするようにするといいでしょう。
洗面所では、洗濯洗剤や柔軟剤、シャンプーなどをこぼしてそのままにすると、CF(床)は変色してしまいます。垂らしてしまったりこぼしてしまった場合は、必ず拭き取るようにしましょう。
1-2 部屋内のカビ
とにかく換気を徹底することです。
換気扇を回す際には、通気口を必ず開けるようにしましょう。
通気口がない場合は、外からの空気が入るよう必ずどこか開けるようにして下さい。
密閉状態で換気扇を回すことは、部屋内の様々な設備の故障の原因にもなります。
特に、密閉度の高いマンションでは通気口を開けておくことが大事です。
浴室の換気扇は基本的に24時間回しっぱなしでいいぐらいです。
なので、基本的には通気口は開けっ放しがいいです。
特に、洗面所や北側の部屋は気を使うようにしてください。
1-3 結露による窓枠の劣化、出窓の板の劣化など窓周辺
冬場は結露をこまめに拭くようにしてください。
1-4 鏡の白化現象
鏡の白化現象は、石鹸や水垢が原因です。入浴後に、シャワーなどで流した後、水分をしっかり拭き取ることです。
1-5 1年に一度は大掃除を
賃貸物件の場合、お部屋は貸主のものなので、年末大掃除のように、1年に1回ぐらいは大掃除をすることをお勧めします。
大掃除をすることで、物を動かしたりすれば、クロスや床(特にCF,タイルカーペット、フロアタイル)の汚れや染みの予防にもなります。
また、大掃除をすることで、普段気づきにくい場所に目が行き、過失の予防にもなり、被害を最小限に抑えることもできます。
是非、年末大掃除をすることをお勧めいたします。
2.テープやシールなどの貼物についての注意
シールやテープのような貼物を使用する際には、注意が必要です。
退去時にはすべて剥がした状態で引き渡してとなります。この際、剥がしたあとにシールやテープの跡が残っていたり、剥がしたあとに下地が剥がれてしまったなどは、借主の過失となり原状回復義務が発生します。
貼物の剥がし跡は、それほど高い費用ではないですが、剥がしたときに下地まで剥がすとかなり高額な費用がかかることがあるので注意してください。例としてはチャイルドフックなどは粘着力があるため無理して剥がすと下地も剥がれてしまいます。
無理して剥がすより、そのままにして退去時に貼物剥がし代のほうが安くつくこともあります。
賃貸ではなるべく貼物は避けたほうがいいです。
3.残置物に注意
退去時によくあるのが、残置物です。特に多いのが照明、物干し竿です。
これらは、撤去処分費がかかってしまいます。自分で粗大ごみとして処分する費用よりも業者が処分する費用のほうが高いです。
退去立会いまでに残置物が処分できそうもない場合は、引っ越し先にすべて持っていくことをお勧めします。引っ越し先で粗大ごみとして処分したほうが費用は安くなります。
残置物の大きいものとしてよくあるのが、ガスコンロ、エアコン、温水洗浄便座が代表例です。
また、意外と多いのがインターネット設備の撤去がされていないことです。
退去前にこれらが最初から付いていたのか、自分で付けたものか、付いていたけど自分で撤去しなければいけないのか、契約書を確認したり、貸主や管理会社に確認するようにしましょう。
4.元々あったものがなくなっている
入居時にあったものが退去の時になくなっていることがあります。例えば、洗濯機置場にある排水エルボ、エアコン設置個所についていたスリーブキャップがないことが多いです。
入居時にあったものは貸主のものなので、これらが退去時になければ当然借主負担となります。
エルボに関しては、引っ越しの際に引っ越し屋が洗濯機と一緒に持って行ってしまうことがあるようなので注意してください。スリーブキャップは、エアコンを取り付けるときに取付業者が持って帰ってしまうことがあるようです。スリーブキャップは必ず自分で保管し、退去前にエアコンを取り外した際に付けるようにしてください。
5.報告せずに被害拡大
例えば、ドアストッパーが故障している(ゴムが外れた、マグネットが効かない、金具が壊れた等)にもかかわらず、そのまま使い続けた結果、ドアに大きな傷がついたり、ドアが削れてしまったり、床が傷ついたりすれば、これらは借主の責任となります。
大した事ないと思わずに、何か気になることがあれば必ず報告することです。
6.硬いもの(フローリング、建具など)の傷に要注意
クロスやCFといった貼物は6年の経過年数がありますが、硬いもの(フローリングや建具なの)は経過年数がないと思っていてください(一応建物耐久年数という経過年数がありますが、フローリング全面貼替時に適用されるものです)。
つまり、フローリングや建具といったものに傷を付けると、必ず補修費用がかかります。
フローリングは少しでも傷を付けると、補修費用が何万円にもなります。
建具もいろいろありますが、場合によっては建具交換をする必要が出てきて、建具1枚何万円となります。
他にも、洗面台に物を落としてヒビが入ってしまった、柱に落書きをしてしまったなど、原状回復費用が高額なものもあります。