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2024.05.28
借主(賃借人)の「原状回復義務」って何?
賃貸借契約を締結すると、借主(賃借人)には「原状回復義務」が発生します。
「原状回復義務」という言葉は聞いたことがあるとは思いますが、ちゃんとした意味をご存じでしょうか。
原状回復という言葉をそのまま受け止めれば、借りた元の状態に戻すという意味になりますが、もし、借りた元の状態に戻さなければならないとすると、借主が莫大な費用を負担しなければなりません。借主は、原状回復費用が気になって、平穏な日常生活をおくれなくなります。
では、賃貸借における「原状回復義務」とは何でしょう?
賃貸借における「原状回復義務」の意味
国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下「ガイドライン」という)には、原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義しています。
また、民法621条に「賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年の変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う」と書かれています。 つまり、借主(賃借人)の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等は、借主の原状回復義務となります。
但し、建物・設備等の自然的な劣化及び損耗との経年変化、借主の通常の使用に生ずる損耗等の通常損耗は借主の原状回復義務にはならない。
ということになります。
原状回復義務の具体例
借主(賃借人)の原状回復義務の範囲は、故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等が範囲となりますが、言葉だけ見てもよくわからないと思います。
そこで、ガイドラインに掲載されている具体例をいくつかご紹介します。
・借主の不注意で雨が吹き込んだことなどによるフローリングの色落ち
・借主が日常の清掃を怠った(使用後の手入れが悪い)ための台所の油汚れ等
・冷蔵庫下のサビ等を放置したための床の汚損
・借主が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ
・クーラーから水漏れし、借主が放置したため壁が腐った
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
・落書きなどの故意による毀損
・戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草
・タバコ等のヤニ、におい
・壁などのくぎ穴、ネジ穴
これらの具体例からある程度イメージができるかと思います。
※赤字部分が借主の故意過失もしくは善管注意義務違反です。
その他は、通常使用を超えるような使用です。
※善管注意義務について詳しくは
当然のことですが、もともとあった物がなくなっている(エアコンのスリーブキャップ、選択パンにあったエルボ、最初に付いていた照明など)ことも、原状回復義務に該当します。
他には、貼物(シール類、コード止め類、チャイルドフックなどのフック類など)も原状回復義務に該当します。
経年変化とは
では、借主(賃借人)の原状回復義務にはならない、経年変化と通常損耗とはどういうものでしょうか。
まずは、経年変化についてですが、定義を説明するより、ガイドラインの具体例のほうがイメージがわきやすいと思うので、具体例をご紹介します。
・日照などの自然現象によるものや建物構造欠陥による雨漏りで発生した畳の変色、フローリングの色落ち
・日照などの自然現象による壁クロスの変色
・設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)
などなど。
通常損耗とは
次に、通常損耗ですが、こちらも定義うんぬんは説明するより、ガイドラインの具体例をご紹介します。
・家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡
・エアコン(借主所有)設置による壁のビス穴、跡
・壁などの画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
などなど。
まとめ
・借主の原状回復とは、借主の故意過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等を復旧すること。
・経年変化、通常損耗は原状回復には該当しない。