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2023.06.20
越境した竹木の枝の切り取り(民法233条改正)について
民法が一部改正され、2023年4月1日に施行されました。
今回の主な改正ポイントは、所有者不明土地等関係です。
この所有者不明土地等関係で、相隣関係の見直しという項目があり、その中でも、越境した竹木の枝の切取りが最も注目を集めていたようです。
私の周りでも、この越境した竹木の枝切りに関して、ニュースの見出しだけ見て「枝を切れる!」と勘違いをしている人が思ったより多くいたので、今回取り上げることにしました。
民法233条改正前の越境した竹木の枝の切取り
改正前の民法では、越境している竹木の根については、越境された側の所有者が自ら切除することが認められていましたが、枝については竹木の所有者に切除を請求できるだけで、越境されている側の所有者が自ら切除することは認められていませんでした。
根っこはいいけど枝はダメ!この理論は、私には全くをもって理解できません。この制度趣旨については、民法の学者さんたちの間でも解釈の仕方が分かれていいたようです。時代背景によって解釈の仕方も変わるようですし。
個人的な見解ですが、民法は明治時代に作られたものなので、全く理解不能な条文があります。その中でも、この越境した竹木の枝の切取りは、私の中では最も理解に苦しむ条文の一つでした。
民法233条改正の越境した竹木の枝の切取り
所有者不明土地等関係の改正に伴い、現代の社会経済情勢にそぐわないだろうということで、竹木の枝の切除及び根の切取りに関する民法233条も改正されました。
この条文はそれほど難しい内容ではありませんので、まずは、しっかりと条文を読むようにしてください。
民法233条
1.土地の所有者は、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2.前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3.第1項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一.竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当期間内に切除しないとき。
二.竹木の所有者を知ることができず、又はその所在をしることができないとき。
三.急迫の事情があるとき。
4.隣地の竹木の根が強化栓を超えるときは、その根を切り取ることができる。
自由に切り取ることができるわけではありません
民法が改正されたからといって、越境した竹木の枝の切取りが自由にできるかといったらそうではありません。
ネットニュースなどでは、見出しで越境した竹木の枝を自由に切り取ることができるという雰囲気でした。
自由に切り取ることができる!と勘違いしている人が、周りにも結構いました。
違います!自由に切り取ることはできません!
条文をしっかりと読めば分かると思います。
竹木の所有者さんにその枝を切除してもらうよう請求できることが原則です。あくまでも自力救済(自分で枝を切ること)はできないわけです。この点は、改正前と同じです。
ただし、
①竹木の所有者に切除を催告しても、相当期間内に切除してくれないとき
②竹木の所有者が不明であるとき
③緊急の危険などがあるとき
は自ら切除ができるとしています。
つまり、条件付きで越境した竹木の枝を切り取ることができますということです。
民法233条だけでは問題が出てきそう
竹木の枝の切除及び根の切取りに関しては、この民法233条だけでは、まだまだ問題が出てきそうです。
催告してもなかなか枝を切ってくれないから自分で切ったら、切りすぎて逆に文句を言われた。
枝を切られて木が枯れてしまったと文句を言われた。
大きい木で枝を切るのに自分でできないから業者に頼んだけど、その費用は誰が負担するの?
他にも色々出てきそうです。
一応、改正されたことによって意味は分かるようにはなりましたし、ましにはなったと思うのですが、まだまだそう簡単ではなさそうです。