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2024.05.31
賃貸借契約上の借主には、善管注意義務があります!
民法に「善良なる管理者の注意義務」という言葉があります。
賃貸借契約において、借主には「善良なる管理者の注意義務」があります。
いわゆる「借主の善管注意義務」というものです。
では、この善管注意義務とは何なのでしょうか。
実は、借主がこの善管注意義務をしっかり守っていれば、賃貸借契約での揉め事はなくなるし、ごちゃごちゃと色々書いてある契約書もいらないといっても過言ではないでしょう。
善管注意義務とは
まず、民法には善管注意義務以外に、「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」「自己のためにすると同一の注意をなす義務」があります。
これらの義務は、善管注意義務より軽い義務になります。
そこで、善管注意義務とは、取引上において一般的・客観的に要求される程度の注意をしなければならないという注意義務といわれています。
つまり、かみ砕いていえば、善管注意義務は、人の物を借りているのだから、自分の物を扱うより大事に扱うようにという義務です。
例えば、大事にしている車を友達に貸して、その友達が自分はこのぐらいの凹み傷は気にならない(自分の車と同一の注意で運転した)と言って、凹み傷ができた状態で車を返されたらどう思いますか?
この善管注意義務の意味が分かれば、退去時に、借主さんの故意過失によるものを請求されるのも納得していただけるかと思います。
右の写真はフローリングの傷ですが、これは善管注意義務違反です。
原状回復義務も善管注意義務の一種です
賃貸借契約では、借主は退去時に「原状回復義務」を負います。
この「原状回復義務」も善管注意義務から派生した借主の義務です。
※原状回復義務についてはこちら。
借主の故意過失による汚損、損耗があれば、借主には原状回復義務が発生します。
また、キッチンの壁に油が飛び散っていたり、換気扇が油まみれだったり、浴室が水垢などで白くなっていたり、鏡が白化していたり、まともに掃除をせずにカビが発生していたり。
こうしたものは、一般的・客観的に要求される程度の注意をしていないと判断できます。
右の写真は、浴室の水垢、カビです。これは清掃を怠っていたということで、通常使用を超えるような使用となり、借主責任となります。
※もともと退去時にルームクリーニング費用が借主負担だったとしても、この状態は特殊クリーニング費用を請求される場合があるかと思われます。
借主の報告義務も善管注意義務の一種です
借主には、報告義務というものがあります。
例えば、雨漏りをしているのに、貸主に報告せずに放置していたなどが報告義務違反にあたります。
もし、雨漏りを報告せずに放置して、壁や天井が腐ってしまえば、これは借主の報告義務違反なので、壁や天井が腐ったことについては借主の責任が発生します。
他にも例えばですが、扉が傾いてきて床にあたるようになってしまっていたが、自分は気にならないからそのままにしていた。その結果、床に扉があたって傷ができた。
この傷は、借主の責任です。貸主に報告して直してもらっておけば傷はできませんから。
右の写真は、扉のストッパーのゴムが取れてしまい、その結果、扉に傷ができてしまったものです。ゴムは当然劣化するものですが、放置したまま報告せずに使用した結果、扉に傷をつけてしまったため、借主の責任となります。
善管注意義務は賃貸借契約における借主の根本です
このように、善管注意義務というのは、賃貸借契約上の借主の根本をなすものです。
人の物を借りているのだから、自分の物より大事に扱う。
こうした心構えがあれば、誰にも迷惑をかけずに平穏に暮らすことができます。
昔は、賃料払っているんだから好き勝手に使っていいだろ!!という方もいたとか・・・。
賃料はその部屋を貸してもらっている対価です。好き勝手に使っていいという理論にはなりません。
是非、賃貸借物件にこれから入居される方、賃貸物件に入居中の方は、善管注意義務を理解し守っていただけると幸いです。
私の私見ですが、最近入居する方のほとんどが善管注意義務を理解しているという印象です。
なので、契約時に説明すると納得していただけます。
退去時も自分の故意過失はしっかりと認めてくれます。
本当に助かります。
※借主の善管注意義務について触れましたが、借主ばっかり義務があるのか?と問われれば、そうではありません。大家さんにも貸主としての義務があります。
お互いがしっかりとお互いの義務を果たしているからこそ、平穏に気持ちよく生活できているのです。今回は借主の義務について触れましたが、おいおい貸主の義務についても触れていきたいと思っております。